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心の砂地

Globalkiss的な愛の考察。

僕たちのbest2016④-鱗編-

僕たちのbest2016

鱗・バットゥータの2016ベストアルバムでございます。

10位から順に紹介させていただきます。




10.Bon Iver「22,A Million」



今作が素晴らしいのは「フォーク・ミュージックの電化」という点において新しい提示がなされたということではないでしょうか。


今までの「フォーク・ミュージックの電化」を行った音楽というのは、ギターやピアノの弾き語りを基としたシンプルな曲に、音響的なアレンジ(エレクトロニカなどに影響を受けたような)がなされるというものが定石でした。
いわばバックバンドの電化、がなされてきたのです。


そのような従来の電化・フォークの「歌」の扱いというのは、ボーカリストの美しい声の旋律を聴かせる、というパターンと、
一つの楽器として、器楽的に「歌」(この場合は「声」、と考えた方がいいのかもしれません)を聴かせる、というパターンの二つがあります。


今作では前者のパターンに則ったうえで、フォーク・ミュージックの美しい「歌」を電化させる、という挑戦がなされています。


これは参加したFrancis Starwellによる「Prismizer」という多重コーラスを生み出すソフトウェアによってなされるもののようです。


このようにして作られた電化された「歌」は、美メロとも相まってなんともいえない浮遊感が漂う音楽になっています。


各タイトルの文字遊びも殿下みたいで良し、です。




Bon Iver - 8 (circle) - Official Lyric Video - YouTube




9.大森靖子「TOKYO BLACK HOLE」




今の日本のロックバンドやポップスが聴きたいな、という気分の時があります。

そんな気分の時に今年一番聴いたのが今作。ちなみに今年の新譜だとShiggy Jr.やきのこ帝国、Sugar's Campaignなどもよく聴きました。

僕は「桐島〜」「あまちゃん」ショックによって橋本愛さんを患った経験があるので、彼女がPVに出演した『ミッドナイト清純異性交遊』によってがつんとやられ、アルバム「絶対少女」を名盤とする大森靖子ファンであります。



前作「洗脳」が自分には少し疲れてしまうアルバムだと感じたのもあって、
『生kill the time 4 you、、』『超新世代カステラスタンダードMAGICマジKISS』『劇的JOY!ビフォーアフター』というタイトルを見た時には大森さんの世界爆発、という感じで少し身構えてしまいました。


ですが、豪華なプロデューサー陣のおかげもあってか、今作は外し曲なし、熱量もポップさも全開の傑作。


大森さん流銀杏BOYZ『ぽあだむ』なM4『超新世代カステラスタンダードMAGICマジKISS』、直枝さんとのデュエットが素晴らしいM11『無修正ロマンティック 〜延長戦〜』が特に良し。


大森さんの歌詞はこれが歌詞になるのか、というようなフレーズが飛び交っていて(日本語ラップのラッパーが使ってやられた、となるような言葉)、歌詞だけでも自分たちの世代が集まれば色々語れそう、、、自分語りを思わずしてしまうような、、、。



このアルバム聴いて救われる人っていっぱいいるはずです。
大森さんの音楽は熱量があって、彼女の鋭すぎる感性から出てくる言葉とか、ちゃんと聴かない人には勘違いされるかもしれないけど、毒があるというよりは優しい愛を感じます。

精神状態がよくない時など、とても励まされました。

漫画なら今日マチ子、映画なら山戸結希の作品がとても近い感性だと思います。

銀杏BOYZぴあに寄せた文章も素晴らしかった。



大森靖子「TOKYO BLACK HOLE」MusicClip - YouTube



8.Noname「Telefone」




シカゴのいわゆるチャンス・ザ・ラッパー周辺のフィメールラッパーのアルバム。いや、これはミックステープになるのかな?何にせよフリーDLな音源でございます。

ベストには入れてませんが、今年はアトランタ産のトラップなどもよく聴きました。

あの粗雑な音にヤられ、楽しく聴いたのですが、まだ長い時間聴くとしんどさもあり、だけどヒップホップ聴きたいな、てな気分の時にいい感じでチルできるアルバムとして今作をよく聴きました。


メロウなビートの上で、普通のラップからメロディにのったラップになる瞬間がとても好き。


M9「Bye Bye Baby」がなんとなく切なくて良いな、と思ってリリックを調べたら中絶を歌った曲のようで(1ヴァース目は母目線、2ヴァース目は赤ちゃん目線から!)、
また新しい感性がヒップホップで表現されたな、と感じました。


来年は英語のリリックの意味をちゃんと理解していこうと努力したいです。
今年の『Broccoli』も『Panda』も分かんないと楽しめないものだったと思いますし。




Noname Bye Bye Baby - YouTube


7.冨田ラボ 「SUPERFINE」



一般的にはキリンジのプロデューサーとして、私的には2014年「ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法」という名著を残した富田恵一氏が冨田ラボ名義で若手のノリにノってるボーカリストとコラボした一枚。


参加ボーカリストは、
YONCE(Suchmos)、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、高城昌平(cero)、安部勇磨(never young beach)、城戸あき子(CICADA)などなど、若手のセンスある人青田買いか!なメンバーがフィーチャリングで参加しております。


今までの冨田ラボ作品は一応聴いてはいるのですが、どうしても僕は玄人の「神々の悪戯感」を感じてしまってハマることができませんでした(僕はポップスには若書きが必要であると考えているのです)。



ですが、今回は若手と組んだことが完璧に良い方向に作用しています。
誰が歌うか、で曲の若さというのは変わるものなんですね。


どのボーカリストも新しい顔を見せつつ、らしさがある曲を歌っていて、そのアプローチの違いを比べてみると面白いものがあるな、とも。


私的推しトラックはM4「荒川小景 feat. 坂本真綾」でしょうか。



この路線で、坂本真綾さんのアルバムにトータルプロデューサーとして冨田さんが参加してもらうことを熱烈希望したいと思います。



冨田ラボ - 「SUPERFINE」 / 荒川小景 feat.坂本真綾 TEASER - YouTube




6.Weeknd「Starboy」




昨年、グラミー最優秀賞の「Beauty Behind the Madness」が期待した割にはピンときていなかった自分ですが、今作は文句なしにヤられました。


「メジャーな歌声」と「マイナーな歌声」というものがある、という仮説を立てたいと思います。


かなり乱暴な分け方ですが、
Michael jacksonは前者、Princeは後者に当たります。

現代の日本のアーティストでいうと星野源は前者、cero高城くんは後者です。


「メジャーな歌声」の人はお茶の間にも届くようなポップネスを持っています。音楽に自意識を持たない人にもウケる声です。

対して、「マイナーな歌声」の人はロックが好きな人など、音楽に自意識がある人に強く響く声です。


今年でいえばBruno Marsが前者、Frank Oceanが後者に当たります。


それでは、The Weekndの声がどちらかというと、どちらでもないのが素晴らしいところだと僕は考えます。


The Weekndの声はよくMichael jacksonの声に影響を受けている、似ていると評されます。確かに、私も彼の歌を聴いているとMichael jacksonっぽいな、と思うことはあります。特に前作には顕著でした。

が、今作ではMichael jackson的な声も使いつつも、様々な歌い方(フロウと考えてみてもいいかもしれません)を見せているように私は感じます。

これは〇〇っぽいな、という風に想像しながら聴いてみると、
18曲68分という長尺な今作もより楽しめるのではないでしょうか。


M9『Sidewalks』はロック的なビートにのったKendrick Lamarのラップが凄すぎますが、これに負けないのはさすがです。Kendrickとの相性はベストといっていいのではないでしょうか。



声の加工があるのでそう感じにくいですが、この時の歌はGeorge Michaelっぽいかな、と思ってます。






The Weeknd - Sidewalks (Vevo Presents) ft. Kendrick Lamar - YouTube


5.Bruno Mars「24K Magic」



圧倒的なオーヴァーグラウンド感!

今年はBeyonceなどを筆頭に、メジャーな人がインディな音をやるってのがトレンドだったと思います。

その中で昨年までのトレンドであったDaft Punkの「Random〜」〜Pharrell Williams「Happy」など、幸福感溢れるブラックミュージック路線を1人で繋いだのがBruno Marsではないでしょうか。

80sファンクを中心に、現代にアップデートされた楽曲が並びますが、特筆すべきはM8『Finesse』です。

ニュージャックスウィングを基にした曲ですが、お約束な音を鳴らしつつ、ニュージャック特有のキメが抑えめになってるところが今っぽく。
現在、ヒップホップのフロウが多様化するなかで、ラップパートはもろ90sニュージャックスウィングマナーに則っているというところも良いです。


アルバムトータルで9曲33分、という昔のソウルのレコードのような短さもお見事。


これはベストアルバムにも入ってくるだろうなぁ、と思っていたら今のところあまり見つからず。
発表された時期もありますがもっと評価されるべきなんじゃないの、な一枚。




Bruno Mars - Finesse [Official Audio] - YouTube



4.TAEMIN「Press It」



人気K-POPグループSHINeeのメンバーであるTAEMINのソロアルバム。


今年最も衝撃を受けたシングルはこのアルバムのM1『Drip Drop』です。

TAEMIN 태민_Drip Drop_Performance Video - YouTube


とにかくこの一曲を聴いてくれ!てな気持ちです。説明不要な珠玉の作品。



トラックはLondon Noise(LDN Noise)。つまりは外注なのでもはやK-POPの域を少し超えてしまっている感はありますが。


音源だけ聴いてもぶっとばされると思うのですが、エンタメとしての強度の高さを知っていただくためにも、やたらとお金がかかっているMVも是非観ていただきたいです。ダンスもずば抜けてます。

ちなみにM2『Press Your Number』はBruno Marsが提供。
個人的にはM7『Mystery Lover』からM8『Sexuality』の流れもアガって最高!です。

正直、ダンストラックの隙のないハイクオリティさに比べるとバラード曲は少しどうかな、とか思ってしまうのですがこうした仰々しい音もK-POPの楽しみでもあり。。
と、これは好事家の意見ですが。


彼が所属するSMエンターテイメント(他にはEXO、少女時代、f(x)など所属)はK-POPの中でも洗練されたブラックミュージック志向の音楽を届けてくれるレーベルなので、黒い音が好きで、これからK-POPを聴く人にはまずSMエンターをチェックするところからはじめると良いと思います。



SHINeeの最新シングルも現代型ニュージャックスウィングで最高でした。


SHINee 샤이니_1 of 1_Music Video - YouTube



地元の友人のワゴンRやLIFEで田舎の海沿いを流しながら爆音で聴きたいですね。






3.David Bowie 「BLACK STAR」





David Bowieについては思い入れがあり過ぎます。


僕は彼にグラムだけでなく、ソウル、クラウトロックプログレニューウェーブの入り口を教えてもらったのです。


彼を愛する最も大きな理由は、時代によって、サウンドも、彼自身も変身し続けたところです。


そして、彼は生涯それをやり続けました。

今作も「今ジャズ」、「Jazz The New Chapter」と日本では紹介される、現代ジャズの最先端にいるミュージシャンを起用しています。


昨年のKendrick Lamar「To Pimp A Butterfly」は同じ試みをヒップホップのフィールドで行ったものでしたが、今作はロックというフィールドに現代ジャズを持ちこんだ作品になっています。



僕が彼に色々な音楽を教えられたように、このアルバムで今ジャズの扉を開く人が少しでも増えればいいなと思います。



David Bowie - Blackstar - YouTube





2.Frank Ocean 「Blonde」




黒人のソウルミュージシャンがインディロックを手にしてしまった、という歴史的な一枚。



今までのポピュラーミュージックの歴史では白人が黒人音楽に憧れる、という構図で新しい音楽が生まれてきました。それはThe BeatlesThe Rolling Stonesの頃からはじまり、繰り返されてきました。


その逆の構図である黒人が白人音楽に憧れる、という歴史上稀な形で生まれたのが今作です。


参考として、今作までの黒人音楽の幅を広げた重要な作品として、黒人がロックに憧れる、という点でPrince & The Revolution「Around the World in a Day」を、ヒップホップが内面性を獲得した、という点でKanye West「808s & Heartbreak」を挙げることができますが、今作はそのような20年、30年後にも残るだろう傑作の一つであると私は断言します。


17曲中12曲がビートなしという、ロックバンドのボーカリストが1人で作ったデモのような音数の少なさに、どのジャンルのリスナーも驚くかもしれません。

やっていることが新しすぎて、すぐには良さが理解できないかもしれません。


しかし、これはロックアルバムとしても傑作であり、ソウルミュージックとしても傑作であるという、とんでもない名盤です。



Frank Ocean - 'Nikes' on Vimeo






1.Chance The Rapper 「Coloring book」



今年は本当にアメリカの音楽が凄い年だった。他の人のランキングを見てもそれは明らかだし、自分がランキングしなかったアルバムでもBeyonce「Lemonade」、Kanye West「The Life of Pablo」、Rihanna「Anti」、Solange「A Seat At The Table」、Anderson Paak「Malibu」など、どれも名盤といっていいクオリティのものだらけだと思います。


その中でも徒党を絶対組まない、という今までのヒップホップシーンではあり得ないスタンスによって、アメリカの旬なミュージシャン全員(と、いっていいでしょう!)と絡んで作品を作ってしまい、しかもフリーのミックステープとして発表してしまったがChance The Rapperです。



今年はアメリカ大統領選もあり、多くのラッパー、ミュージシャンが自分の支持者を表明し、応援する姿勢を見せていました。

そうした中でも彼は「若者の投票が大事だ」という言葉のみを残し、特定の支持者は明らかにせず、無料ライブの後に投票所まで行く「Parade to the Poll」というパレードを行いました。


そうした徹底した姿勢には僕自身は危うさも感じてしまうのだけれど、これからを最も見据えているのは彼かもしれない、という期待も込みで、新しいことをしているのは間違いない彼が、2016年は一位です。





Chance the Rapper ft. 2 Chainz & Lil Wayne - No Problem (Official Video) - YouTube




書き手: 鱗・バットゥータ
https://soundcloud.com/twin_flamingo


https://twitter.com/lno_glk


2015年のベスト

http://rokisuna.hatenablog.com/entry/2015/12/16/204830