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心の砂地

Globalkiss的な愛の考察。

すべての愛は消耗品である⑤ -2015best-

僕らのbest2015

去年の12月、ceroシングル(Orphans/夜去)が出た時から、「来年はceroがベストアルバムだ」と周囲に語っていた街から鱗 a.k.aリンたろ君。夏ごろからOMSBがヤバい!となにかにつけて話し、一時期は喋り方までオムスに近づくまで彼に傾倒していました。何かと楽しそうな彼でしたが、1年で一番ヤバかったアルバムはどうなっているのでしょうか。

 

今回は2015年リリースに限ったアルバムを10枚、ランキング形式で紹介します。まずは1位から。

 

 

 

 

 

 

 

 

1.YELLOW DANCER - 星野源

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星野 源 - SUN【MUSIC VIDEO & 特典DVD予告編】 - YouTube

ブラックミュージックとJ-POPの融合が見事になされた大傑作。

 

『ブラックミュージック』という言葉が使われる時、その言葉が指すのはファンクネス、黒さ、つまりはビート感覚の事が多い。

実際に、黒人音楽史の本流というのはブルース、ファンク、ヒップホップのような展開を持たないもの、反復音楽であると考えられる。

しかし、このアルバムで星野源が目指した『ブラックミュージック』というのは黒人音楽史からすると傍流であるR&B/ソウル史観(楽曲に構造を持つ。Aメロ、Bメロ、サビといった起承転結がある。)に基づいたものだ。

「ブラックミュージックのメロディ、ハーモニーの素晴らしさ」というのを彼は追求し、D'angeloやThe Weeknd、Tuxedoといった今年アメリカのチャートを騒がせたアーティストたちからの影響を通過させて、更には現代のJ-POPのメロディとまで接続してしまった。

USヒットチャートを追っかけている人なんてもうほとんどいない、と思うが(と書いた先から『Glee』や『ピッチ・パーフェクト』から興味が出て、というルートがあることに気づいた)、これ一枚でそうしたことをせずにもブラックミュージックのトレンドが分かってしまうのだから、知識の密度としてもかなりお得ではないでしょうか。

来年ではなく2015年12月という時期にこのアルバムが出たのも、2015年にこういうことをやったんだ、という彼の音楽史への拘りまで感じる。

上記の3人のアーティストの楽曲からの影響については私が指摘せずとも誰かが詳しく解説してくれるだろうからここでは割愛する。「拝啓、星野源様」的特集を誰かお願いしたい。

直接影響がある訳ではないだろうと思うが、私がこのアルバムを聴いて思い起こしたレコードが一枚あるのでそちらも紹介したい。

Rasa - Everything You See Is Me (1978)

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Rasa - Everything You See Is Me - YouTube

 メロウなものを掘ってる人には割と有名な盤ですが、これはハレ・クリシュナという宗教団体の宣伝用のレコードというちょっと変わったものでずっとCD化されてなかったのだけれど、去年まさかのプロダクション・デシネからCD化。権利関係どうなってるんでしょう。『YELLOW DANCER』で言うなら「Snow Men」のメロディが近いものが。もしかするとCD化で星野源も聴いたかな、とか妄想がすぎますか。

 

 先日、TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』に彼が出演した時には今回のアルバムの音楽についてこう語っていた。

どれだけニュアンスを真似しても、「いやいや、D'angelo聞くから。D'angelo聞くよ」ってなってしまうんじゃないかな?って自分で思ってしまって。やっぱり俺、日本人なんだなと。自分は本当にJ-popが大好きで、あの展開も大好きなので。とにかく、その両方の手綱を絶対に離さないまま最後まで俺は行くんだ!っていう。(ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル 12月12日放送分より)

 

この一言を聞いた時にとても感動してしまった。と同時にやられた!という宇多丸さんと同じ気持ちにもなった。この両方の手綱が『YELLOW DANCER』というタイトルに繋がっているという。ううん、唸るしかないでしょう。

他にも、宇多丸さんとの会話がとても興味深いものになっているので、是非今からでもポッドキャストなり何なりで聴いて欲しい。

大人計画クドカンと仕事をし、NHKでコントをやれば内村さんと絡み、コラムをやれば細野晴臣さんと絡み、ドラマで綾野剛と共演し、女性関係も…と嫉妬する要素しかない彼をそういったどうしようもない理由で聞かないのは本当にナンセンス。

彼の音楽のこれからをずっと追いかけていたいと思う。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2.Obscure Ride - cero
 

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cero / Summer Soul【OFFICIAL MUSIC VIDEO】 - YouTube

星野源『YELLOW DANCER』がR&B/ソウル史観を重視したものなら、このcero『Obscure Ride』は黒人音楽史の本流、ファンク/ヒップホップの反復音楽のビート感覚を消化した作品だ。

今までブラックミュージックのビート感覚を日本のバンドが取り込む時には様々な態度がとられたけれども、結局は『渋谷系』に代表されるような引用と編集を用いた借り物のビート感覚で、そこではグルーヴが抜け落ちたようなものになっていた。

特にD'angelo「Voodoo」に代表されるようなネオソウルのレイドバックした重いビートや、Jディラが生み出したヨレた(ジャズで言う所のスウィングしているという感覚に近い)ビートというのは、日本のオーヴァーグラウンドでは全く聞こえてこない音であった。

何故こういった音が聴こえてこなかったかというと、そういったブラックミュージックのビートを今までは「黒人のノリ」「黒人だからできる」といった風に片付けていた所があったからではないであろうか。

今作でのceroはそういった00年代以降の「黒人のノリ」を見事に獲得している。その土台の上に彼らなりのニューソウルだったりが乗っかって見事な「折衷」が表現されている。この音楽への誠実さというのを私は評価したい。

ロックが持つ個人主義というか、自然体が1番とか、人の内なる所にこそ凄いものがある、とかいうような考えに最近疑問があって、こうやって努力して外にアクセスしていく人たちの方が良いもの作るじゃないか、とか思った。

シティポップとかそんな言葉を吹き飛ばしてしまうぐらいこのアルバムはすごい力がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.Think good - OMSB

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OMSB "黒帯 (Black Belt Remix)" - YouTube

日本でヨレたHIPHOPのビートを作らせたらこの人の右に出る人は今の所いないんじゃないか、と思う。

リリックも同世代の思いとかそういうの背負ってるところとかが出てきてるようで、ヤラれた。

好きな箇所はたくさんあるのだけれど、13.「Think good」の歌い出しが特に好きだ。

もしかして俺は小せえんじゃねぇ? グチグチ小言を言いてぇだけ 自信の無さ故 陰険なフレーズ 懺悔なら今だぜ真剣にやれ (OMSB/Think goodより)
映画「THE COCKPIT」や「菊地成孔の粋な夜電波」での喋りなどで強烈に同世代感を感じたし、この人ヒップホップが好きなんだなというのがびしびし伝わってきてより好感を持った。

SIMI LABの2ndもこの1年聴き続けたので、もしかするとOMSBの作ったものが1番耳に入っていたかも。 


 Page2:Mind Over Matter 【通常盤】

Page2:Mind Over Matter 【通常盤】


 
 
 
 
 
 
4.To pimp a butterfly - Kendrick Lamar
 

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Kendrick Lamar - i (Official Video) - YouTube

歴史的傑作。

自分から言うことはもうないかも。声色の種類の多さ、ロバートグラスパー、今ジャズ勢との邂逅。あまりにも凄すぎて感覚麻痺してきているのかもしれない。

歌詞の解説をAKLOがしてくれているので、是非是非その辺もチェックしていただきたい。検索してください。

ケンドリックの声マネはよくやりました(ほぼ伝わらない)。ヒップホップとか興味ない人の方が笑ってくれたりします。

 
 
 
 
 
 
5.Lotta Love - G.RINA
 

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G.RINA - 愛のまぼろし feat. tofubeats 【MV】 - YouTube

80sの良い要素というのが全部詰まっていてかつ、ヒップホップ通過後の今でしかあり得ない音に仕上がっている。

G.RINAはリズムも良いけど声の重ね方がとても上手いと思う。重なった瞬間の心地良さ。歌っていても、どこかフロウしている感じが出てるしヤバい。声質なのかリズムの取り方なのか。まだまだ聴き込めるとこがあります。

そして客演がやけのはら、PUNPEE、LUVRAW、tofubeats

もう参りました!しか言うことなくなりますね。

 
 
 
 
 
 
6.Twenty First Century Problems - Lauren Desberg

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いわゆる「今ジャズ」は『Jazz The New Chapter1&2』(3はまだ買ってないや)片手にかなり聴きました。
ロバート・グラスパーに代表されるような、教会で小さな頃からセッションを重ね、音楽学校で理論を学び、Radiohead等のインディーロック、ニュースクール以降のヒップホップを愛聴している世代のジャズ。隙がないような完成度の作品だらけで物凄く楽しみました。ただ、「今ジャズちょっと格好良すぎないか?問題」というのが私自身にはあって、少し隙があったりキュートな雰囲気があるものってないかなぁと思って探していたところに見つけた1枚。ポップスフィールドに大きく開いた今ジャズ(ノラ・ジョーンズやベッカスティーブンスは別にして)って感じでとても好きです。
こんなアルバムがname your priceなんて!

 
 Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK)

Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK)


 
 
 
 
 
7.Paintings of Lights - 新川忠
 

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Prefab sproutScritti Polittiに通じる美メロ炸裂。
こういうのやられると多少完成度がどうとかなくして大事にしたくなります。
いいシンガーソングライターが持ってる機材で一人で作りました、っていうレコードは大好き。歌の上手い人はもっと声を器楽的な方向で使うようになったりする場合もあるのだけれど、そうでなくてメロディから逃げてないのがいい。ちょっと似ているものが多いかな、とは思いますが。
カミーユ・グローテル」はずっと聴くだろうな。
カミーユ・クローデルのことは全く知らなかったけど、写真を見て新川忠が曲を書きたくなった感情を理解出来るような気がした。美人彫刻家ってロマン。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
8.Renaissance - ペトロールズ
 

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まずは長岡亮介という男が浮雲という名前で我々の前に出てきた時の衝撃から話をしたい。
2005.6年頃、私はビザールギターというもののマニアであった。簡潔に言うならそれは古い変なギターだ。Fender社のものを模倣しようとしているはずなのに、可笑しなことになってたりするものだとか、変わった形や仕様のものだ。
 
ビザールギターの中でも人気の機種というのがあって、筆頭に挙げられるのがVOX社のファントムとティアドロップだ。どちらも見た目のインパクトがにあるので人気があるが、なにせ音がなんともいえないペラペラした音(しかもVOX社のものではなくコピー製品なら尚更だった)で普通に使うのは難しい、と私たちの中では評価していた。
ファズを踏んでガレージ系のバンドで使うのか、可愛らしい女性に持たすだけか、それしか使い道がないのではないのか。でも使いたい、うーん。でもなぁ。そんな苦悩の日々が続いていた時、彼が現れたのだ。
確かミュージックステーションだったと思う。椎名林檎の横でどうやらファントムを弾いている男がいるではないか!あれ使えるの?え?と驚いている間にファントムに寄っていくカメラ、あれ、ちょっと仕様がおかしいな、ん?テレや、テレになっとる、テレや!テレや!とはしゃぎながら、その手があったか、と私たち(総勢3名ほど)はきぃきぃと悔しがったのであった。
 
それから浮雲、もとい長岡亮介を見るたびに複雑な感情を抱きつづけていたのだけれど、今回のアルバムは文句無しに黒くてメロウで好きな所ついてきててびっくりしました。
この人はカントリーが好きだとかそういう頭でいたのでここまで黒いグルーヴをやる人だとは思ってなかった。手練のギタリストが率いるスリーピースバンドってどうしてもクリームやジミヘン型のつまらないソロの回し合いとかになったりするのだけど、そういう事もなく。むしろたまに入るギターソロとかもっと聞きたいな、と。
ライブ行きたいと珍しく思いました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
9.Sour Soul -  BadBadNotGood & Ghostface Killah
 生バンドでRZAやサイプレスヒルのようなサウンドができるのか、という事にまず衝撃。ゴーストフェイスのラップは例えとかが面白かったりするらしいのだけれど、そういう所は分からなくても打点として優れているように思う。
バックの音は日本のポストロック系のバンドでも近いような音を聴いたことはあるのだけれど、このスカスカ加減と怪しい感じは聴いたことないので、今作をヒントにそういう人が5lackとかとやってくれたら面白いのにな。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
10.4 walls - f(x)
 

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 K-POPやK-HIPHOPも沢山聴きました。ヒップホップの方がハングルのラップの面白さみたいなのを感じて影響を受けた気がしますが、このアルバムの完成度は凄いのでこちらにしました。
ディープハウスなんだけどたまに入ってくる本物志向すぎるラップや、クールすぎるメロディが不思議なバランスになってます。
ヘタウマな日本のアイドルものも愛しているのだけれど、韓国のこの実力主義なところも格好良くていい。今の気分としてはこっちに寄ってます。
 
 


参考図書:

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)





 
書き手:街から鱗(@lno_glk)